Apple HomePodからサウンドのAR(拡張現実)を妄想する

Appleが昨日発表した「HomePod」は、日本での発売はずいぶん先になりそうですが、その考え方自体に面白い部分があるように感じたので、妄想を含めて綴ってみようと思います。

Apple HomePod https://www.apple.com/homepod/

サウンド環境におけるHuman Centered Design

従来のステレオを基本としたオーディオシステムというのは、最適なリスニングポイントがあるので、物理的に人間を真ん中に置きながらも、機器のセッティングに人間が合わせるという意味では、Human Centered の対極という面もあったように思うんですね。

でも、現代の一般の人の音楽の聴き方って、1か所に座って聴くというよりも、生活のなかに自然と音楽があるというほうが多いでしょう。空間を検知して、空間にあわせて音楽を提供していくという考え方は、サウンド環境におけるHuman Centered Designと考えることもできるのではないかと思ったりしています。

こういうシステムができることで、音楽を作る際の音の定位という考え方も変わってくる可能性があります。部屋で音楽を聴く環境って、マニア向けにはさまざまな形で極められているようですが、一般向けには、Walkman→iPod→スマートフォンと変わってきたポータブルな音楽の聴き方の変化に比べて、大きな変化がなかったので、少し期待してしまうところがあります。

サウンドのAR

部屋の特性を解析するというところから一歩進んで考えてみると、コンボリューションリバーブのように空間特性のプロファイルを切り替えられたた面白いかなと思います。同じようなことを考えている記事もありますね。

実際の部屋鳴りがあるので、ヘッドフォンのようにはいかないとは思いますが、空間特性を切り替えることで、教会の音響、スタジアムの音響といったものを作り出したり、天井高を2倍にしたときの音響をシミュレーションしたり、バスケットボールのなかに入って聴いた音といったものも、ある程度は可能かもしれません。

これって、現実のなかに、現実ではない音響効果を持ち込むことともいえるわけで、「サウンドのAR(拡張現実)」といってもいいのではないかと思ったりしています。これってもっと極端にすれば、マイクで周囲の音を拾って、現実の足音や話し声に、仮想の空間にあわせた残響を加えて、現実の空間に混ぜていくなんてこともできるかもしれない。しかも音楽の音は相殺してハウリングしないようにしつつ。そんなこと妄想してしまう発表でした。