源ノ明朝・源ノ角ゴシックを主要OSにインストールしてほしい

4月10日がフォントの日になったということで、源ノ明朝という新しいフォントの発表もありました(写真はAdobeの発表イベントの会場展示)。1ヶ月もたってしまいましたが、「マツコの知らない世界」という人気テレビ番組でフォントが取り上げられたという、フォントの世界としては珍しいイベントにあわせて、源ノ明朝が登場したことの意義について書いてみます。

ファミリーをもったフォントの重要性

源ノ明朝の登場というのは、単に新しいフォントが一つ生まれたというだけではない意義を持っていると感じています。日中韓対応に対応しているというのも大きな特長の一つですが、2014年に登場した源ノ角ゴシックとあわせて、明朝とゴシック、それぞれ7つのウェイトをもったフォントが、誰でも無料に使えるオープンソースとしてリリースされたことはとても重要です。しかも、フォントのデザインも癖が少なく、使いやすいデザインです。

ある程度の段階のウエイトが揃ったファミリーとして構成されていて、明朝とゴシックがあるということは、情報を文字で表現するうえでは極めて重要なことで、情報の強弱をつけたり、情報の位置づけの違いを表現することが可能になります。日本で文字情報を扱う機器として最大のシェアを持ち続けてきたWindowsの日本語環境に、ファミリーという概念でフォントを構成するという考えがなかったことは、非常に大きな損失でした。日々文書を作っている人たちに、美しいフォントを有効に使って情報を効率的に伝えるという環境が与えられていませんでした。

統一されていない日本のフォント環境

現在、日本の文字を最も多く扱っているのは、PCやスマートフォンといったデジタルデバイスです。こうしたデバイス間で情報を受け渡すとき、それぞれのOSで標準でインストールされているフォントが異なり、ユーザー自身が自分でフォントをインストールしなければ、同じ体裁でのやりとりはできません。2017年にもなって、日本語のフォント環境は統一されていないのです。違うOSのデバイスで見ると、文字のデザインが異なるだけでなく、文字がスペースからはみ出てしまったりということが、普通に起きています。

一般の人にこそ使ってもらいたい

源ノ明朝・源ノ角ゴシックは、デザイナーではない一般の人にこそ使ってもらいたい、インストールしておいてほしいフォントだと思います。プロのデザイナーが印刷物を作るのであれば、フォントを購入したり、契約したりすればよいのですが、デジタルで情報をやりとりするときには、情報を見る人のデバイスにフォントがインストールされている必要があるので、誰でも無料で使えるということはとても重要になります。

個性的な表現をしたい部分では、有料のフォントを使えばよいですし、WebであればWebフォントも使えます。しかし、標準的な部分で、このフォントを使っておけば、どんな環境でも正しく見ることができると安心できるものがひとつでも存在すれば、日本語の情報環境の基盤として機能するようになります。
フォントの使い方は、それぞれ個性があってよいのですが、情報を共有するうえでベースとできるようなフォントが存在するということは極めて重要な意義を持ちます。

ぜひ主要OSにインストールしてほしい

オープンソースのフォントとして、源ノ明朝・源ノ角ゴシックという、日本語の統一的なフォント環境を作るベースはできたのです。次は、だれにでも簡単に使えるように普及することです。

フォントをインストールするというのは、デザイナーには簡単なことでも、一般の人には少し敷居の高い作業です。現段階での主要なOSであるWindows、Mac OS、iOS、Androidに標準であらかじめインストールされるようになれば、日本語の情報を受け渡すうえで、安心感のある環境ができあがります。GoogleのAndroidは順次インストールされていくでしょうが、他のOSでもぜひ検討してほしいと思いますし、ユーザーの側からも、声をあげていけたらと思っています。