1月28日(月)に、東京大学で開かれた公開講座「知と幸福」で、原研哉さんの授業を聞いてきた。(なぜか、授業が終わったら、授業の紹介のページが消されてしまっていた。)
2月に開催される展覧会『House Vision』がテーマになっていて、スケルトン&インフィルによるリノベーションなどについて語られた。住宅は金融商品ではなく、生活の道具であり、もっと個性的な住み方があっていいという考え方はその通りだと思う。しかし、「こんなのいいでしょ」とデザインとしての提案を見せればそれで変わっていくのかというと、自分の体験から考えても、それだけではむずかしいと感じた。
中古物件を買ってリノベーションするためには、中古での物件購入費に加えて、リノベーションの費用がかかる。リノベーション用のローンなども出てきているが、さまざまな形で守られている住宅ローンにくらべれば、借りやすいとはいえない。新築のマンションや新築建売りの場合は、住宅ローンがひとまとまりになって比較的借りやすいし、減税もある。これに比べるて、中古のマンションや戸建てを買ってリノベーション、建て替えをするとなると、支払い時期や支払先も別れてしまう。それにあわせて資金を用意するとなると、ある程度、資金に余裕がないとむずかしくなってしまう。でも、資金に余裕があれば、はじめから新築にしてしまう、という矛盾。画一的な既存の新築購入に比べて、中古物件購入+リノベーションによって個性的な住み方を目指したほうが、資金を調達しにくいのだ。これに加えて、「築何年」という目安としては、はじめに建てられた年が、物件価値とされてしまう。
中古物件がリノベーションされて、物件の価値が高まれば、お金を貸しているほうにとっても良いことのはず。しかし、今の銀行はそういう判断はしない。個性的ということを、汎用性のなさ、つまり売りにくい物件として、資産としては価値が低いと考えてしまう。非常に貧しい発想だと思う。企業の場合は、経営を立て直して、企業の価値を高めるという発想もあるのに。
また、住宅ローンの場合、銀行がお金を貸すとしても、判断するのは保証会社ということになり、保証会社は別会社なので、銀行は「保証会社の判断なので」と責任のがれできる構造になっている。
シリコンバレーからさまざまなIT企業が生まれてくるのは、技術者だけでなく、投資する側とセットになっているからだという。現在、ある程度、お金のかかることをおこなうとしたら、金融を無視するわけにはいかない。リノベーションして住み替えるという方法を一つのパターンとして広く認知してもらい、金融機関も巻き込んで、デザイン的な価値や個性的な住み方という価値を、金融的な価値としても認めさせていかないとなかなか実現できない。
大きな企業を巻き込んでこういう展覧会を開くのだったら、ぜひ、金融機関なども巻き込んで進めてほしいと願っている。授業のあとのアンケートにも、こんなことを書いた。
先週の多摩美での授業はワークショップ的だったので、大教室の講義というスタイルの授業は大学を卒業して以来だと思う。客観的に見ることができて、何かを考えるにはとてもいいと思った。こういう公開講座は、各大学積極的に開催して欲しい。
授業のあと、学食でラーメンを食べた。本日の定食は「鍋」だった。鍋が食べれる学食っていいな。でも、夜の東大キャンパスは異常に暗かった。