独立して14周年を迎える。
幸まるで乾杯。
店主にも祝ってもらい、
隣の人とも盛り上がる。
うまく行かないことも色々あるけれど、
周囲の状況が大きく変化するなかで、
なんとか続けてこれたことを
喜ぶべきなのかもしれない。
大学で卒論のテーマを選ぶ時に、
今は軽い気持ちで選んでいるかもしれないけど、
時間が立つと、卒論のテーマに戻ってくる
と言われた。
ぼくは、カンディンスキーの芸術論をテーマにした。
それほど深い理由があったわけではない。
絵としてはクレーやビアズリーのほうが好きだったが、
資料が集めやすく、論文を書くには、
カンディンスキーのほうが書きやすそうだった。
また、原書の文献を一冊以上入れなくてはならないので、
よい翻訳のあるカンディンスキーは
選びやすかったという、姑息な理由もあった。
カンディンスキーは法律を学んでいたが、
30歳近くになって、画家を志すことになる。
遅いスタートであり、
天才肌の画家というわけではないので、
当時の美術の状況を的確に分析し、
絵画とはなにか、創作するとはどういう意味があるのか、
色にはどんな効果があるのかを考える。
論理的な思考と、感性的な判断とを
融合させようと試みる。
ぼくは30歳少し前まで、編集の仕事をしていた。
そのなかで並行して、
マルチメディア系の開発の自分で行うようになり、
Webなどの普及により、
デザインの仕事がメインになってきた。
デザインをディレクションする立場から、
自分でデザインするようになったが、
はじめからデザイナーとして
スタートしたわけではないので
簡単というわけではなかった。
そこで行ってきたのは、
カンディンスキーが行ったことに近い
といえるように思う。
デザインとは何なのか、
どうしたらデザインと呼べるものになりうるのかを
さまざまな事例のなかから、抽出すること。
それを自分の制作作業のなかで、
どうしたら活かせるのかを考えることだった。
こうした苦闘の一部は、
この一年で書籍という形になった。
一つの形にすることができたのはうれしかった。
20年の時間を経て、
卒論のテーマに戻ってきた
といえるのかもしれない。
結局のところ、自分の関心の持ち方というのは、
図らずも、そこに表れていて、
同じ枠組みで、ものを考えていたのではないかと思う。
おとぎ話でなくても、
予言的な言葉というのはあるものだ。
ちょうど、卒論を書いていた、
大学4年の時に開局したJ-waveは、
同じ時間を経て、20周年を迎えた。
10月1日は、24時間の特別番組をやっていた。
J-Waveは、特に独立してからは、
いつもそばにいてくれた。
そして、もっとそばにいて
支え続けてくれた
うちの猫に深く深く感謝。