音楽著作権は誰の利益を守るか

iTunesMusicStoreが日本でオープンした。
ジョブズも来日していたそうで、
意気込みが感じられる。
発表会の最後にはBeckのライブがあったらしい。

99セントよりは高いが、
1曲150円というのは妥当な値段だろう。
クレジットカードを使わなくても買えるというのも、
良いことだと思う。
今までシングルCDを買わなかった人が、
150円でネットで買えるなら買おうかなという気になれば、
音楽がもっと身近になり、市場も広がる。
保存するスペースもとらないし。
シングルCDが売れなくなっても、
全体としては良いことのように思う。

しかし、アメリカではCDが売れるより、
iTMSのほうが制作者の利益が高いそうだ。
中間業者が少ないのだから当然といえるのだが、
日本では、CDと同じ割合なのだそうだ。
つまり、CDやジャケットの制作費や中間マージンがない分は、
レコード会社(未だにレコード会社?CD会社?)などに
いってしまっているということだ。
日本で、著作権が問題になるとき、
それは制作者の権利ではなく、
レコード会社などの利益なのだ。
著作権という言葉を盾にしている。

著作権を守るということは必要だが、
コピーワンスとか、コピー制御というのは、
その作品が文化的なものではないということを表している。
iTMSでも、本当に好きな音楽はやはりCDで買うだろう。
iTMSで買うのは、その場限りで捨てても構わないものだ。
もし、何十年かたって、ある音楽が再評価されたとする
しかし、どこを探してもコピープロテクトのかかった音源ばかり。
さてどうするか。
レコードなら、音質はともかくとして、
再版することができる。
つまり、コピープロテクトするということは、
チラシのように、その場限りのものです
と言っているようなものなのだ。

現在のアートや音楽を歴史のなかで語るなら、
いわゆる現代アートや現代音楽を取り上げることはないだろう。
ポピュラーに消費されたもののなかにこそ、
レベルの高いものがあったと判断するに違いない。
江戸時代の浮世絵のように。
しかし、そうしたものは、あとから掘り起こすことが
とても難しいのだ。
コピープロテクトは、今の利益しか考えていない。
しかし、一度世の中に出した物は、
どのような運命を歩むか想像することができない。

音楽著作権で重要なのは、
100万枚売れるCDを200万枚売ることではなく、
1万枚とかのレベルで売れている人たちが
音楽を作りながら生活していけることだ。
しかし、レコード会社は
100万枚売れるCDを200万枚売ることばかり考えている。

100万枚売れるCDを買う人は、
年にそれほど多くのCDを買わないし、
売り上げ的に見れば裾野と思える部分を広げないと
質の高い音楽家も、質の高い音楽愛好家も育たない。
それは、音楽産業そのものを先細りにしてしまう。
学生時代のお金のない時代にどれだけ音楽を聞いたかが、
その後の音楽との関わり方を決めることになる。
もし、レンタルレコードやFMがなかったら、
今、70年代のロックスターが来日するたびに、
超満員になるということにはならなかっただろう。

規制することばかりを考えずに、
文化としてどう育っていくかと考える必要がある。
レコード会社や著作権協会には、
文化産業としてのプライドを取り戻してほしい。