京王線で

授業が終わって、気持ちいい天気だったので、
久しぶりに駅まで歩いた。
京王線に乗ると、すぐに寝てしまい、
調布の手前で目が覚めた。
窓の外を見ると京王閣が見えた。
こんなに天気のいい日には多摩川が見たかったので、
少し悔しかった。

少し離れたところから、
言い争うような声が聞こえた。
扉の横の席に座った女の人の横に、
大きなリュックを背負った
太り気味の秋葉系な感じの中年男が
スナックを食べながら立っていた。
男の背負っているのリュックが
女の人の頭の上まで突き出ていて、
女の人はまっすぐ座っていられない状態になっていた。
一番後ろの車両だったので、
すでに車掌さんが出てきていて、
仲裁している感じだった。
ぼくは熟睡していたので、
その前に何があったのかは
よくわからない。
車掌さんが出てくるくらいだから、
何らかのトラブルがあったのだろう。

電車はすいていたので、
2・3歩移動すればいいだけの話なのだが、
男は「次の駅で降りるんだからいいじゃないか」
と、聞かない。
そのうちに、駅が調布駅に到着するので、
車掌さんは車掌室に戻った。

男は、電車を降りる間際に、
女の人に「うざいんだよ」というような
捨て台詞を吐いて降りていった。
すると、女の人は声を上げて泣き出した。
車掌さんが謝ったりしていたが、
それでも泣き続け、延々と嗚咽が聞こえてくる。
まわりは、「見て見ぬふりをした人たち」みたいな
雰囲気になり、気まずい。

女の人は、結局、調布から新宿まで泣き続けていた。
ぼくはさすがに目が覚めてしまい、
嗚咽を聞き続けることになった。

その女の人までは、
扉一個分くらいの距離があったのだが、
その上、熟睡していたので、
ことの発端が何だったのかもわからない。
しかし、さすがに「何があったのですか」と
聞くわけにもいかない。
もやもやとしたまま、家に帰った。