ネットとテレビ

楽天によるTBS株取得に関連して、テレビとインターネットの関係について語られることが増えている。楽天のいう「放送とインターネットの融合」には希望を感じないが、テレビ業界側の反応もお粗末という感じがする。

Yahoo配信の毎日新聞の記事では次のように書かれている。
三木谷社長と交流があるテレビ関連会社の経営者は、三木谷社長の真意について、「ネット業界は急成長を続けてきたが、各社とも広告収入は極めて厳しい。三木谷社長は、現状では成長の限界に近いと感じているはず」と推測する。
ネットでの広告収入を増やすには、魅力ある番組が不可欠。だが、ネット業界に、ドラマやバラエティーなどの番組制作能力は乏しく、「テレビ局の持つ番組制作能力を、のどから手が出るほど欲しがっている」(同経営者)ようだ。

また、吉岡忍氏の話として、やはりYahoo配信の毎日新聞の記事
「IT業界はここ10年来、テレビに負けないコンテンツ作りを目指してきたが失敗に終わった。ネットは便利だが集客力が弱く、信用力もまだまだ。一方、テレビの強みは、膨大な視聴者の感受性と共鳴するコンテンツ作りにおいて、長年の経験があること。楽天はこれを欲しがっているのだろう。」

■テレビ局のコンテンツ制作力に魅力があるか
現在、テレビ番組の制作は制作会社が中心になっているわけで、制作能力が欲しければ、制作会社と業務提携したほうが安価で確実であることはあきらかだ。それも、テレビ番組というものが、コンテンツ制作の理想型だという前提にもとづいての話。ネット上のコンテンツとして、映像が使われることは珍しくなくなっている。コンテンツの形態としては、ネットとテレビの境目は少なくなっていくだろう。しかし、ゴールデンタイムでやっているようなバラエティ番組が、ネットのコンテンツとして適しているとは思えない。そもそも、テレビのコンテンツとして適しているかどうかさえあやしい。現在のテレビを理想型としたネットコンテンツは、人の心をつかむようなものにはならないと思う。

■ネットにテレビ的な集客力が必要なのか
「集客力」という言葉自体が「マスコミ」の発想。広告媒体として、ある程度の集客力は必要だが、不特定多数の集客ではなく、特定な嗜好をもった集客であることがネットの特徴であり、広告媒体としてのメリットといえる。つまり、無駄にお金がかからない。むしろ、この部分でテレビは広告メディアとして破綻しかけている。

■テレビはネットより信頼性が高いのか
本来、情報は編集されることによって価値が高まるが、テレビは、編集されるほど信頼性が低くなる。それで、メディアとして信頼性が高いといえるだろうか。テレビの情報は制作者が想定した「一般の人」向けで、特定分野の専門家にとって有用なものはほとんどない。ネットは確かにガセネタも少なくないが、情報を自分で判断し、裏をとることができる人にとっては、ネット全体としては、テレビより情報の信頼性が高いといえるのではないか。

■テレビに負けないコンテンツ作りを目指してきたのか
テレビを意識してサイト作りをしていた人は、ほとんどいないだろう。

■IT業界のコンテンツ制作は失敗だったのか
「IT業界」のコンテンツ制作は失敗だったかもしれない。「IT業界が仕事として作ったコンテンツ」は主に広告であり、魅力的でないものが多かったと思う。しかし、ネットではコンテンツは「誰かが作るもの」というわけではない。掲示板やブログ、SNSなどの仕組みづくりとそれによるコンテンツは、他のメディアでは作り得ないものであり、これらを含めて「失敗だった」というべきではないだろう。また商業的にも、テレビショッピングよりネット通販のほうが、はるかに規模が大きい。

と思ったりする。