写真を使ったデザインのトレーニング

2月14日に、宮崎県青島の青島神社儀式殿(能楽堂)で開かれた「青島デザインの学校vol.2 カタチを見る、仕組みを作る〜じつは身近な、いいデザインの仕組みとは?〜」でお話させていただきました。青島は鬼の洗濯板で有名な景勝地で、江ノ島のような感じでつながっている青島のなかは、なぜか生態系が違うようで、熱帯の植物が生い茂っていました。

青島

青島 鬼の洗濯板

青島

青島のなかにある青島神社の儀式殿が本土側にあり、ここが能楽堂なのです。能楽堂でセミナーを行える経験は貴重だと思うので、とても楽しみでした。能楽堂の下には、音を響かせるための壺があると聞いていたので、宮司さんに訪ねてみると、喜んで説明していただき、壺も見せていただきました。

青島神社 能楽堂

能楽堂の壺

せっかくの能楽堂ですから、何か音を出してみたいと思って、飛行機でもそれほど荷物にならないトラベルギターを持って行きました。機内持ち込みでもいけるかなと思ったのですが、混んでいるので預けてほしいとのことで、人が入れるほどの楽器用のケースに、小さなトラベルギターが入れられて、人間以上に丁重に運んでいただきました。これだったら、ちゃんとしたギターを持っていけばよかったと思ったり。まあ、チープな音も好きなんですけど。

海とトラベルギター

第1部のワークショップでは、写真を使ったワークショップを行いました。能楽堂という環境は素晴らしいのですが、作業するには不向きなので、企画はかなりむずかしいのです。この企画はこのようなものでした。

絵画なども含めて、視覚的構成の基本として、
オブジェクトを幾何学的に捉えるという考え方があります。
聖母子像の人物が三角形になっているというような。

対象そのものはなんでもよく、
それがどういう配置になっているかを、
幾何学的に構成して写真を撮影します。

等間隔に並ぶもの、
一直線に揃えられているもの
三角形になっているものなど。
それをほかの人に見せて、
どういう考えで構成して撮影したのかを
推理してもらいます。

『デザインの教室』では、
オブジェクトの配置に意味を持たせること
それが他の人に伝わるということを解説していますが、
これを写真の構図によってトレーニングします。

モノの見せ方を幾何学的に構成するトレーニングであり、
それがどのように伝わるかを確認する作業でもあり、
デザインの意図を読み取るトレーニングでもあります。
また、フォトディレクション面でのトレーニングにもなります。

これは、以前、書籍の企画を考えているときに浮かんでいたアイディアなのですが、写真を撮るには良い環境でもあるので、今回、実現させていただきました。

撮影に先立って、現代のデザインのなかでの幾何学的な造形の重要性や、ロトチェンコの写真を例にして、幾何学的な面白さを写真として切り取ることの意義とデザインとの関係をお話ししました。

結果的に、日本有数の景勝地で、観光地ぽくない写真を撮ることを要求してしまったのですが、参加者のみなさんの視点はとても面白く、楽しく作品を見ることができました。あくまで、造形的なトレーニングなので、写真としてのクオリティを求めていたわけではないのですが、予想以上の出来栄えに驚かされました。

参加された方々の写真

デザインの練習は、やはりデザインすることでしか行えないのですが、幾何学的な造形を練習するといっても、自分でデザインをして、それを客観的に見直すということを繰り返すのは、なかなか大変です。ところが、写真であれば、手軽に色々な組み合わせやバリエーションを試すことができて、それを客観的に見直すこともできます。トライして確認するというサイクルを、時間的にも極めて短く、数多く行うことができるのです。

そして、写真を撮ることは、モノを見ることにもつながります。日常的に、何気なくモノを見る時に、デザイン的な視点をもつことができるようになると、デザインに関する感受性が飛躍的に高まります。

今回、街とデザインの関わりを考えなおすことがテーマでもありましたので、観光地的ではない、街のなにげない部分の面白さに目を向けたことも、意義のあることなのではないかと思っています。

今回、この形のワークショップは、かなり面白いという感触を得ることができました。また機会があれば、やってみたいという気持ちはありますので、ご希望がありましたら、お気軽にお声がけください。ワークショップという形でなくても、内容的にはだれでも手軽にできることなので、デザインのトレーニングとして、個人やグループで試してみるのもよいかもしれません。