The Third Decade of Web

10月に、フリーランスになって20年を迎えた。何かブログの記事を書きたいと思ってはいたものの、うまく気持ちをまとめられずにいた。先日、WebSig10周年のパーティに参加させていただいて、10年という単位で振り返ってみることで、少し整理された感じがしたので、それを記してみようと思う。

世界最初のWebサイトは1991年というけれど、個人がインターネットにつなげるようになってきたということでいえば、1994年がそのスタートの年といってもよいと思う(インターネット歴史年表)。自分自身も、自宅で初めてインターネットにつないだのは1994年だった。

1994年からの20年という期間を俯瞰してみると、はじめの10年と次の10年は2つの段階に大きく分けることができるように思う。もちろん、すべてのことをくっきり分けることができるわけではないのだけど。

The Third Decade of Web from Yoshihiko Sato
 

はじめの10年というのは、次々に新しいことが生まれてくる日々だった(図の上方向への拡大)。表現力が拡大し、いろんなアイディアが実現されていった。Flashの登場をはじめとして、それまでにはできなかった表現ができるようになっていく、ワクワク感のある時期だった。Windows95以降、パソコンの性能も飛躍的に進歩していったし、OSやブラウザのバージョンアップも速かった。それが必要なくらい、コンピュータやインターネットをとりまく状況の変化が激しかったのだ。

現在、ウェブブラウザ上でできることの多くが、この時期にすでにあらわれている。表現力という意味では、むしろ今のほうが、後退している部分もあるかもしれない。実現できないというわけではなく、表現として求められないという意味で。

2004年からの10年は、Windows XPを使い続けるユーザーが多かったことでもわかるように、Webを使ってできることの範囲は、それほど大きく変わってはいない。この10年は、ユーザー層が拡大する時期だったといえると思う(図の横方向への拡大)。2000年を超えた段階で、すでに多くのユーザーがいたのは確かだけれど、あくまで自宅でパソコンを使っている層、あるいはビジネスユーザーだった。スマートフォンの普及は、そうした層の幅を超えているし、時間的、場所的な制約もなくなってしまった。

人が多くなり、滞在時間も長くなることで、ビジネスが大きなレベルで成り立つようになり、SNSのようなコミュニケーションが盛んになった。この10年では、特別なサイトを除けば、斬新な尖った技術や表現よりも、コミュニケーションが主役になった。それは、健全なことだと思う。多くの人にとって、だれかが細々と作ったものよりも、人間そのもののほうが魅力的なコンテンツなんだろう。(手間暇かけて、苦労して作ったコンテンツよりも、誰かの失言を扱った記事のほうが人気があったりもする。失言には、その人そのものが最もよく表れているといえるかもしれない。)

さて、もう終盤にさしかかっているけれど、今年は2014年。英語には10年を意味する「Decade」という言葉があるが、Webの世界も「The Third Decade」へ入ってきている。「The First Decade」の表現力の拡大・多様化、「The Second Decade」のユーザー層の拡大・多様化につづいて、この図の奥行き方向へ、3つめの次元への拡大・多様化の時代がくるだろう。ブラウザの範囲を超えて、関わり方の多様化へ。センサーの塊でもあるスマートフォンが、すでに多くの人の手のなかにあるのだから。

ぼく自身も21年目。「The Third Decade of Web」へ、進んでいこう。