圧倒的な基礎力

女子フィギュア、
純粋にキム・ヨナ選手の演技は素晴らしかった。
デザイン的な視点で見ても、
腕が長く見えるシンプルな衣装は効果的だし、
時間というスペースを分割して特徴的なポイントを作り、
明暗・静動のコントラストをつけていくという
デザイン、絵画、音楽など、
あらゆる創作物の「構成」の基本に忠実だと感じる。
ガーシュインはミュージカルも多く作っているから、
わかりやすく、派手な展開をする曲を作るのが
うまいんだよな。

下を向きながら回転しているのに、
上に伸ばした手のひらが
回転の中心でぴったりと静止して見えるというように、
細部にすべて配慮が行き届いている。
手の動き、足や膝の動きすべてに柔らかさがあり、
所作が美しいので、
どんな演技も、成功か失敗かというレベルではなく、
美しく見える。
普通に1メートル程度滑っただけで、
身体の動きのしなやかさ、美しさが違う。
採点方法は色々むずかしいようだが、
素人の目には、ジャンプとかいう以前に、
根本的な基礎力が勝敗を分けているように見えた。
圧倒的な差に見えた。
それはスケートの基礎という以上のものなのかもしれない。
たぶん、あれに勝つには、
トレーニングとかという以上に
日常生活の小さな手の動きや、
ものごとを観察する視点から変えていかないと
無理なんじゃないかな。

落語家さんの前座修行というのも、
日常生活のなかで、
美しい所作を身につけるという意味も
あるように思うのだけど、
見ること、聞くこと、手を動かすこと
人間にとって基本的な行為であるほど、
修正し、高めることがむずかしいのだよな。

デザインでも、細部の雑な部分に気づかない人に
自分で気づいてもらうようにするのが
とてもむずかしい。
色々なことを考えさせられた。

ただ、金メダルというレベルではなく、
10代で、誰にも見れない景色を見てしまった
キム・ヨナ選手の今後が、少し心配ではある。